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映画「MEN 同じ顔の男たち」を観た感想

Amazonプライムアレックス・ガーランド監督の映画「MEN 同じ顔の男たち」を観たので感想です。

音楽や環境音が素晴らしい

現在上映中「シビル・ウォー アメリカ最後の日」も話題のアレックス・ガーランド監督の作品「MEN 同じ顔の男たち」まずは音楽が素晴らしいと思いました。
今作の音楽担当はベン・サリスベリー(Ben Salisbury)さんとジェフ・バーロウ(Jeoff Barrow)さん。音楽担当の二人は同監督の映画「エクス・マキナ*1」でも担当をしており、その当時から作品に対する音楽のアプローチ(特に不穏なイメージの音楽でしょうか)に対するこだわりが窺えます。「シビル・ウォー アメリカ最後の日」もこのチームのようなので、音楽にも注目したいところです。

【参考】

[376]SFスリラー『エクス・マキナ』におけるジェフ・バーロウ、ベン・サリスベリーによる共同制作の音楽について | IndieTokyo

ジェフ・バーロウから考える――アカデミー受賞映画『エクス・マキナ』の不気味で冷たい映像美と劇伴の関係 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

また、作品内の中盤に、廃トンネルのなかで主人公ハーパー(ジェシー・バックリーさん)が音遊びをするシーンがあります。そのシーンはさながら作品内でも気分転換の一服のシーンでありつつ、そのトンネルの先にはその後、彼女に降りかかる不条理が潜んでいるというそんなシーンでもあり、音遊びをしているうちは楽しそうなのですが、トンネル内に響く残響や山彦が自己を拡大しているようにも感じさせつつ、不気味に残響する音は不安を駆り立て、自分が一人であることを再認識させるという、そういう不気味さがあるように感じます。

主演のジェシー・バックリーさんの演技がいい!

タイトルにある同じ顔の男としてのロリー・キニアさんの役どころもすごいんですが、主人公のハーパー役ジェシー・バックリーさんの演技がすごくカッコイイ!
物語はハーパーの夫が目の前で落下死してしまい、気持ちの整理のために日常を離れ片田舎を訪れるところから始まります。そういった背景を背負った主人公の気持ちの動きやその葛藤はこの物語のキモであり、また、ホラー映画らしく恐怖演出のために主人公にフォーカスして映画は描かれていきます。そのどのシーンをとってもジェシー・バックリーさんの演技がすごいんです!
恐怖でおびえつつも戦う姿勢、夫との関係性のなかでも、主人公の芯の強さが示されており、とにかくすごくいいんです!

主人公をとりまく現実こそが不条理ホラー

監督はインタビューの中で、本作品を図像学(イコノグラフィー)に挑戦する中で制作したという旨のことを語っています。

映画『MEN 同じ顔の男たち』オフィシャルサイト

映画内でもメタファーが散りばめられているし、公式サイトでも煽っている映画のラスト20分もすごくシンボリックで意味深です。
主人公を取り巻く夫との関係性や、田舎町で遭遇することになる"同じ顔の男たち"、いずれも現実的に在り得る理不尽な存在であり、映画の中ではその現実とも夢とも判然としない不条理そのものがホラー演出となっています。

人は一人では生きていけないのは分かるからこそ、人に迷惑もかけたくないし迷惑もかけられたくない。日々日常を生き抜いている中で、静かに叫びたくなる。

映像と音楽が綺麗なイギリスの映画、不条理ホラーものではありますが、主人公のジェシー・バックリーさんと一緒に戦っていく感覚で楽しめる映画です!

 

MEN 同じ顔の男たち

*1:「アナイアレイションー全滅領域-」も同様